目の前に座す存在は、
すでに自分の父ではないことを、
重々理解していたものの、
思いもよらぬ話の展開に、
正直、山背は面食らっていた。
地下王国?智慧の宝庫…?
この土の下に?
え?地下に人が住んでいる?…
鳩が豆鉄砲を食ったようというのは、
きっとこのような顔つきのことを言うのだろう。
返事もできぬまま、目の前の神であろう人を
じっと見据えてしまっている自分に
はたと気付き、山背は頭を振った。
「し、失礼いたしました。あまりにも想像だにしていなかったことゆえ、恥ずかしながら、混乱してしまいました。続きをお伺いしても…?」
涼やかな表情で、山背を見つめていた厩戸王は、
優しい微笑を湛えて、言葉を継いだ。
「理解できぬのは仕方ないでしょう。私がこれからお話するのは、この国の表の歴史には残っておらぬことです。歴史というものは、常に、勝者側が語り継ぐものしか残らないもの。それゆえに、あまりにも大切な、この国、この星の根幹に繋がる話であってさえ消されてしまう。
よく覚えておきなさい。これから先の先の時代にまで渡り、出来事は捻じ曲げられ、歴史は真実のみを語ってはいないということを。
一度、話をしたとして、どこまでの理解が進むものかはわかりませんが、私ももう長くこの地球に留まることはないでしょうから、そなたには、
話して聞かせておきます。」
山背は、その言葉を聞いて、改めて、背筋を伸ばした。
もう厩戸王の姿ではない、日美の神がはっきりと目の前にいらっしゃる。
美しい神は、清らかな澄んだ声で語り始めた。
「この星に命持つ存在が誕生する前に、
この星の内側より大いなる神が誕生されました。
その神が誕生された後、私たちが生きるこの地には、次々と神々が誕生していきます。この神々は、この星に、宇宙より降り立ちた初の神よりも前にこの星に存在していたのです。」
山背は、日美の神の語る話を、一言一句漏らさじと耳を攲てた。
まるで、見知らぬ星の物語を聞くかのような話に胸が躍るようでもあったが、話が佳境に入る頃には、ワクワクするような思いすらも消え、
いつしかその話の中にすっかりと埋もれた自分になっていた。彼は、宇宙の星が瞬く空間にいることにさえ気付いていなかった。
