魂たちの物語〜地球に生まれて〜

地球に生まれし魂(ひと)としての物語を綴っていきます

其の一 魂たちの物語〜地球に生まれて〜

このブログは、

「しあわせこころのつくり方」のブログに記載していた『地球に生まれし魂(ひと)として』という魂の物語だけを、読みやすいように抜粋したものです。

 

【プロローグ】

 

ほとんど灯りのない真っ暗な空間に映し出されたのは、あまねく星々が放つ輝きだった。

そこに集うことのできるのは、三国の「神」と名の付く存在のみなので、なぜ、若き彼がその場に参加していたのか、私にはわからない。

ただ、その日、特別な通信を受けとったことで、四神と若き彼の五名が、その通信を送ってきた星の位置を確認していたのだ。

通信の内容はこうだ。「このメッセージを受けとった方へ、どうかお力をお貸しください。われらの神の光が奪われました。わたくし達は、今、見知らぬ脅威にさらされています。決して破られることのないよう張られた結界が破られ、禍々しい波が入り込んできております。これが、奥の神殿、次なる神に立たれる方のもとへ届いてしまう前に、どうぞお力をお貸しください。われらの場は・・・・」

途切れ途切れの声は、美しい天女を思わせるが、あまりにも逼迫しているのか、語っている内容が、あちらこちらへと飛んでいる。ただ、伝えたいことは、どうやらどこかの大きな光持つ神の光が突如として奪われてしまったということと、見えない脅威によって、その星が破壊されていく様子を語っているように思われた。

その通信が終わると、突然、青く輝く美しいまあるい星が映し出された。

「なんて綺麗な星・・・」と、若い彼が声をあげたその瞬間、黒いマントを被ったような男が両手を広げ、その星を覆っていく姿があらわれた。

「な・・・」絶句した彼の目が大きく見開かれた。何か言いたげな彼の様子が気になりながら、私たちは、その通信の内容の真偽と解析を急いでいた。

数日後より、私は、定例の神事のために、神殿奥の水晶の間にこもりきりになった。

明けて奥より表に戻ってきた時には、若き彼らが、あの美しき青き星「地球」へと向かうことが決まっていた。

すべての説明を聞き終えた後、私は言った。「なぜ?こんな大事な話を、私の居ないところで決めてしまったの?納得がいきませぬ。なぜ、そのような見知らぬ地へと、われらが神までもご一緒されるのか。」

 

私たちは双子神であり、対となって存在している。性別はないが、日美の神は男神の要素が多少強く、日見の神は女神の要素が強い。

日美の神は、知られし宇宙の中で、最も美しく賢き神として知られ、光のネットワークの調整役としての役目を担っていた。日見神は、法と神理の源となるひかりを護る存在として、神事を旨としていた。役割は違うが、この星の二つ神として存在し、三国の柱となっている。永き年月の中に於いて、二つ神が分かれて過ごすことはほとんどないと言っていい。

 

「誰かが行かねばならぬでしょう?あの者たちは、まだ若い。まだ未踏の星に行き、帰って来られぬようになることもある。その時、われらの内の誰かがあちらにおらねば、道をつけることすらかなわぬ。それ程に、あの青き星は、この場より遠いのだ。」

美しい笛の音を思わせるような穏やかに優しい声で、日美の神は語った。

わかっている。わが星は二つ神がいる。一つ神が残っておれば、どうにかなる。そういうおつもりだろう。でも、首を縦に振りたくない。良い予感など何一つない。いや、この神が降りられることは、大きな光と導きをもたらすであろうから、あちらの星にとっては、大きなチャンスだ。なれど、私は納得がいかなかった。

「地球」という星がある辺りと、私たちの星では、時間の流れが違う。様々な分子の組成が違い、波動も違う。「悪」「闇」「魔」というもの達が蔓延るという地球と助けを求めてきた高天原という場は、あまりにも遠いのだから。

 

 

(一条の君)

「一条は、いついかなる時も、日美様のおそばを離れませんね。」

「日美様がご不在の折には、いつも日見さまの奥の間へお越しですよ。ずっと問答をされていらっしゃるご様子で。」

「一条は、とにかく学ぶことがお好きなのでしょう。ほら、今日も日見さまのお部屋においでです。」

 

日見の神は、神事の時以外、奥の間にて過ごされている。その奥の間には、長く続く渡り廊下を渡っていかねばならず、日見の神の許可がない者は通ることがかなわない。

無理矢理に入ったならば、特殊なセンサーのようなものに触れることとなり、そうなると、別の空間へと飛ばされてしまうことになる。

一条の君は、許可を取ることもなく、当たり前のように渡り廊下を渡っていく。

それを咎める者は、ここにはいなかった。

一条の君は、まだ年若く、時折見せる笑顔は、まだ幼ささえ残っているような青年だった。

誰よりも好奇心に溢れ、向学心いっぱいの若者は、特別研鑽のため、日美様付きで公事に携わるようになってまだ日が浅い。

彼らの年代の魂たちは、互いに学び合い、磨き合う3人のグループを組み、様々な課題を渡されていた。

一条の君には、紀の国の不動(ふどう)と、実の国の清(せい)実(じつ)の二名の仲間がいた。

とかく若者というものは、好奇心に溢れているものだ。また、そういう者ほど、自信過剰にもなりやすい。

「清実、不動、聞いてほしいことがある。これは、ここだけの秘密だが、先日、日美様のご公務に同行し、眺望の間にてみてきたものがあるのだ。

私はどうしても、あの時に見た青い星が忘れられない。まだ若く見える美しく煌めく青い星。その星に、大きな魔の手がかかっている。私はどうしてもあの魔から、あの星を護りたい。救いたいのだ。」一条は熱っぽく語った。

「なんて星だい?」いたずらっぽい目が輝く、不動である。

「よく知らない星だよ。かなり遠いのだ。その星の近くにある神の星よりSOSが届いたんだ。そのメッセージによると、青い星は地球と名付けられていたよ。」

「知らない星だね。一体、どんな星なんですか?それに、SOSって‥‥。何が起こっているんでしょうか?」丁寧な語り口は、清実である。三者三様、まるで質も性格も違う。

それでも、互いの違いを理解し、尊び合い、補助し合う関係性が出来上がっている。

「一緒に、行ってみないか?」一条は二人を誘った。「三人で一緒に・・・。次のグループ課題に、他星の神々のもとにて研鑽を積む話があっただろう。それにこの星を充てることはできないだろうか?」

「いいよ。」即答したのは不動である。

清実は言った。「地球という星を対象にしてよいのか、三神に伺ってみたのですか?そもそもSOSを出している星に、いきなりわれら三名が行って、何ができるのでしょうか?」

二人の答えはわかっていた気がする。

「わかった。三神に話をつけてくる。」そう言うと、一条は、急ぎ足で、日美の神のおられる正殿の間へと向かった。

 

「やはり来たか。」日美の神は、軽やかな仕草で、ここにお座りと一条を誘った(いざなった)。

「ゆっくりと、そなたの思いを聞いてしんぜるゆえに、そう逸らず(はやらず)に。」

何を語らずとも、日美の神はすべてを理解している。それでも、自らの口で語れと仰るのは、言葉にすることで考えを調え、気付きが生まれ、覚悟が生まれるからに他ならない。

一条は、ゆっくりと腰を下ろし、大きく深呼吸をしてから、背筋を伸ばし、まっすぐに日美の神を見た。あまりにも美しく、優しい微笑みを湛える神に、一瞬、言葉を失いかける。

日美様のおそばを離れることになる・・・その衝撃が一条の心に、初めての不安を投げかけた。

それでも、あの青い星は、「ここへきて」と、強い思いで、自分を呼んでいるように感じて仕方ないのだ。

一条は、もう一度、呼吸を調え、日美様のお顔をまっすぐに見つめなおし、一言一言、丁寧に言葉を紡いだ。

 

「あの星に、あの青い星、地球という星に、行きたいのです。」言葉を繋げようと思ったものの声が詰まって先が続かない。

「なにゆえに?」優しい口調はそのままに、けれど、端的すぎる質問に、一条は余計に言葉に詰まった。何をどう話せば伝わるものか、こんな思いをするのは初めてのことである。

当然、日美様は一条の気持ちなどすべてわかっている。何を伝えたいのかもわかっている。

そして、一条の方も、日美様がすべてお見通しであることを知っているはずである。けれど、こんなにも言葉を紡ぐことに緊張が伴うなどなかったことなので、自分自身に困惑しているかのようだった。再び、深呼吸をして、話しはじめる。

「あの黒いものを祓いたいのです。青き地球が、あの黒いものに覆われていく。それはあってはならないことだと、強く感じるのです。日美様、あれは一体、なんだったのでしょう?文献でしか知り得てはおりませんが、あれが闇というものなのでしょうか?禍々しいとは、ああいうもののことを言うのでしょうか?悪しきもの、禍々しきもの、魔というものは、あのようなものを言うのでしょうか?あれは一体、なんのために、地球という星を覆うように黒いマントを広げていたのでしょう?私は、知りたいのです。そして、あの闇を祓いたい。祓いたいのです。」思いの丈がはじけた。自分で語った言葉に驚いた様子で、一条は茫然としていた。

ふっ…と、日美の神の口元がほころぶ。一条はそのお姿を目にして、我にかえった。

「やはり、そういうと思っておったのだ。正義感と好奇心の塊のようなそなたが、あれを見て知らぬふりは出来ぬだろう…と。」しばしの静寂の後、日美の神は一条に問うた。

「それで、そなたがあちらに乗り込んだとして、一人でなにができようぞ?」

「皆とともに参りたく存じます。」

「皆…とは?」

「わが友の二名と。」

「三名で乗り込むと?それで勝算があるのか?」

「うっ…。え、いえ。えと・・・」

日美の神は立ち上がり、やわらかな光の入る窓辺に立ち、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「一条、そなたにしては、考えが浅はかだな。もっと冷静に物事を見つめ、何をどのようにすべきかの算段が必要な案件じゃ。なにぶん、地球という星のことを、われらはさほど理解しておらぬ。地球へ向かう直接のルートも今はない。あの黒いものの正体もわからぬし、そもそも、そなたら三名が行ったところで、何もできぬどころか、還って来られぬようになるやもしれぬ。気持ちはわかるが、逸りすぎておるのではないか?」

一条は、珍しく唇をかみしめた。

「その通りでございました。ただ…ただ、日美様、ここにこうしているうちに、あの美しき青き星は、どんどん、どんどんあの黒いものに浸食されてはいかぬのでしょうか?

私は…私は居ても立っても居られない気持ちにございます。なにか、なにかできることはないのでしょうか?」

日美の神は、一条に背を向け、窓辺に射し込む光を見つめながら、小さな声で「わかっておる。」とだけ答えた。

 

不動と清実は、一条が戻ってくるのを、緑豊けき丘の上で静かに待ち続けていた。

「一条殿のあのようなお姿は、初めて見ますね。」清実が口をついた。

「うむ。なにを見たのであろうな。あの一条が、あんなにも心動かされるとは、妙なこともあるものだ。それほどまでの衝撃的な出来事が、広き宇宙には散らばっているということか?」

「それほどのことであれば、神々が簡単にはお許しになることはないように思いますね。」

「清実は行きたくないのか?」不動が驚いたように尋ねた。

「私は、今は、実の神様のおそばにて、学ぶべきことがたくさんありますから。実の神様の教えを一つ一つ学び積み上げて、宇宙の法の真髄を感じとうございます。」

「そうか。清実は、賢者の道を歩む者だものな。私は、野山を駆け巡り、大自然と一つとなりて、この身の内に移りゆくそのものを感じたい。それがどこでもよいのだ。見知らぬ土地であれ、そこに野山があり、自然があるならば、そこの自然と戯る。そこに真理があるように感じるのだ。」不動は目をキラキラさせながら語った。

「なるほどですね。不動殿は、その見知らぬ地球という星に、どのような自然が宿っているのかを、自分の身で感じとりたいのですね。」

「単なる好奇心というやつか!?わたしも一条とさほど変わらぬのかな。」不動は笑いながら答えた。

清実は、ふと物思いにふけったような表情となって告げた。

「でも、なんでしょう…一条殿に、不動殿のような明るさはなかったように思うのですが。好奇心というよりも、なんというのでしょうか…切羽詰まったような。どこか苦し気に見えたのですが、気のせいでしょうか?」

「ふむ。たしかにな。しかしまあ、賢き彼のことゆえ、そこまで思い込んでもおらぬと思うが・・・。」

 

しかし、一条は思い込んでいたのである。自分でもわけがわからぬ程に、思いが青き星に捉われ離れない。この三国の中にあって、そのような思いに駆られることなど、他の者にはあり得ないことだろう。一条自身もそう思う。

逸りたって、日美の神の前に歩み出たものの、考えてみれば当たり前の如く追い返されてような結果になってしまった。

「当たり前じゃないか。」一条は、待たせている二人のところに戻れずにいた。

「何を血迷ったことを考えているのだ、私は。」そう独り言ちると、自分の膝を叩いた。

「けれど、あの星に行かねばならない。そんな気がして仕方がないのだ。誰が私を呼んでいるのだ?これは錯覚なのか?いや、そんなはずはない。誰かが私を呼んでいるんだ。

あの遠い星で?知らない星にいる誰かが?まさか!」自問自答の時が過ぎていく。

「まさか、あの黒いマントの男が私を呼んでいるのだったら?・・・そんなことがあるだろうか。わからない。けれど知りたいのだ。そして、青い星を救いたい。あの星に住まう神々を私は救いたいのだ。どうしたらいい?私に何ができるのだ?」

 

日美の神の部屋を出てから、どれくらいの時が経ったのだろう。この星の時の流れは曖昧で、空といわれる上空の色合いは、優しい光を帯びて、ふんわりを色を変えていく。

常に、まばゆい白い光を纏うこの星は、どこにいても美しい香りが漂い、自然の奏でる音すらも美しい音楽の響きのように聞えてくる。

 

「あ!しまった!」一条は、二人を待たせていたことに、ようやく気付いた。

一体、どれくらいの時が過ぎていたのかはわからないが、地球上の時間でいえば、2時間はゆうに超えていたであろう。

さすがにもう居ないだろうと思いながら、二人と会っていた丘へと向かう。空間に歪みが生まれやすいため、星の中での瞬間移動は禁じられているため、飛行の術を使う。

まさかと思ったが、二人は一条の戻りをずっと待ってくれていた。

二人の姿が目に入ったとき、一条の目からは知らず知らずのうちに涙がこぼれていた。

「すまない。私としたことが。」

清実はにっこりと、不動は大仰に笑ってくれた。

 

事の次第を話したところで、まあそんなところだろうと思っていた二人は、驚く様子も落胆する様子も見せず、それよりも、なにがそんなにもそなたの心を激しく揺らすのか、それが知りたいと伝えてきた。

一条は、自分にもわからない…としか答えることができなかった。

「あれを、見てくれたらわかると思うのだ。きっと、二人にも‥」そう呟いただけで、あとは静かな時間が流れていった。

 

(紀の星にて)

不動は不思議でならなかった。もともと、そんなに物事を深く考えるタイプではない。思ったら、即行動する。それが、周りを巻き込む問題に発展したとしても、自分の信念を曲げないところがある。それでも、この世界では、それを問題視するような者もなく、たとえ誰かの行動によって、自分に何らかの問題が降りかかってきても、それはとても大切な学びの機会とありがたく受けとめられる精神が宿っている。光の世界といえど、ひたすらにぬくぬくと、ただ歌ったり踊ったり、自由に好きなことをしているわけではない。光の世界であっても様々な出来事は生まれるし、問題も起こる。ただ、地球と違うのは、問題を、問題を捉えぬこと。常に、語り合い、学び合い、互いを理解し合い、感謝が生まれる。違いがあっても、争いにはならず、その違いを、自分にはなかったものと、初めて触れる知見に感動を憶え、素晴らしいと讃えるのだ。

そこには、絶対的な信頼と赦しがある。そのおおもとには、誰一人漏らすことなく、愛と慈しみを注ぎ続けている祖神がいるという安心感があるのだ。

不動の祖神は、日美の神と日見の神の兄弟神、紀日の神である。きい様と呼ばれ、若き者たちの人気者である。日美の神が聡明で美しく、遠くにいる大スターを羨望のまなざしでみよう存在ならば、紀日の神は、みなと円陣を組んで語り合い、ともに野山を駆け巡り、ともに汗を流す、大先輩、コーチのような存在である。

不動は、思い立ち、紀の神のもとへやってきた。

「きい様。最近、一条の様子が変なのです。今まで、このようなことはありませんでした。この前、四神とともに、どこかの星から送られてきたというメッセージを聞いて戻ってきて以降からずっと。地球という星に行きたいと、われらも一緒に行ってくれぬかと誘ってくれました。もちろん、一条がそう言うのなら、私はともに行ってみたいと思いますが、当然、お許しが出ないとのことで、一条はずっと塞ぎ込んでいるように見ゆるのです。一条自身も、わけがわからぬと申しておりました。一体、彼に何が起こっているのでしょう?地球という星は、一体どのような星なのでしょう?きい様は、ご覧になっていらっしゃるので、お話を伺いたいのです。」

紀の神は、いきなり自らの口元に手を持っていき、口角をあげて微笑みながら、不動に話し始めた。「不動よ。にっこりにっこりじゃ。」

はたと、不動は自分に力が入っていたことに気付く。

「そうじゃ、そうじゃ。要らぬ力を抜いてな。そうしてゆ~っくりと息を吐いて、自身の奥の智慧を呼び覚ますんじゃよ。」

「はい」と一言だけ返事をして、不動は自身の内に意識を向ける。

「よいか、不動よ。地球という星に関しては、われらも今、調査中じゃ。地球は惑星としての位置づけで、恒星の太陽と衛星の月というものがあり、その三つの存在によって生命の基本が成りたっておる。三という数が基本となるところは、われらが星と同じくであるが、その仕組みはまるで違う。今の段階でわかっておることは、あちらの時間軸とこちらでは相当な差があるということ。気の流れが不安定でな、地球に存在する人という、われらとよく似た者たちだが、それらにも大きな影響を与えておるということ。また、どうやら、様々な星からの魂たちが集える場になっておって、光を湛える者も多いが、闇を大きく持つ者も多い。光の者たちがずっと光のままでいられるかというとそうでもなく、また、闇からの存在がずっと暗きものを発しているかというとそうでもない。魂の修行場としての位置付けが大きいように思うが、なんと流刑地として使っておる星もあるようなのだ。ということは、相当に、様々な価値観が発生しておる星だろう。実に、面白き場じゃな。受容の星ともいうべきかのう。」

 

不動は目をまんまるくした。「そんな星が、この宇宙にはあるのですか!別の魂にとっては流刑地であるのに、別の魂には修行の場であると?それらの存在は、交じり合うことなく、まったく触れ合うことなく別の場に存在しているということですよね?」

「それがのう、違うようなのじゃ。みなが入り交じり、暮らしを営んでおるそうな。

こちらとは違う組成にて存在できる場とのことで、肉体というものを持たねなならぬらしい。」

「肉体?なんですか、それは?」

「なんと言うたらいいのだろうのう。姿形は似ておるのだけれどのう、変化もできぬし、短い生をしか生きられぬ。魂の容れ物となるものだが、そこには魂とは別の感情が生まれついておるそうな。わしも生まれてないのでな、ようわからんが。」

「すみません。まるでわかりませんでした。。。」

「はっはっは。そりゃあそうじゃ。わしとてもわからんのだから。しかし、これは事実じゃよ。日美の神が、あの方の多大なるネットワークを通して、手にいれた情報じゃけ。

しかしのう、われらが星からは地球へはいかれなんだ。その道が作られてないのでな。」

「はあ・・・。そんなところへ・・・。」

「しかし、一条は諦めがつかぬのであろうのう。まあ、わかっておらなかったことでもないがの。」

「それにしても、諦めがつかぬというのは一条らしくもないと思うのですが…。なにがそんなにも彼を逸り立てることがあるのでしょう?」

「あれも若いからのう。送られてきた映像に宿る地球の気に触れて、少し気あたりでも起こしたのかもしれないな。まあ、少し待て。今、日美の神と実の神が動いておられるから。近いうちに何か事が運ぶやもしれんからの。その時まで、さらに自らを磨き調えてあれ。よいか、そなたこそ、気持ちが逸り、動かずにはいられんようになる気質が強い。動きすぎるゆえに、動かざるの不動の気を名に持たせたのじゃ。時には、俯瞰して物事をしっかりと見つめる訓練をしておきなさい。

 

 

 

つづく