魂たちの物語〜地球に生まれて〜

地球に生まれし魂(ひと)としての物語を綴っていきます

其の十一

(再びうつしみの星にて)

 

一条、不動の他、数名がうつしみの星に到着した。第一陣と同じように、不思議な空間を通り、それぞれの間に案内されていく。どの部屋の案内も、まるで音声データのように前回と同じことを告げていた。だが、第二陣は、第一陣とはまるで異なった様相を呈していた。なぜなら、一条の質問があまりにも多く、また、その質問のすべてが精彩だったからだ。

たとえば、「その肉体は、地球を創りし神が、地球に様々な命の花を咲かせるためにこさえた器。なれど、その神はもう幽宮にて隠遁あそばして、この器の数は限りがございます。まだまだ数千年分の種はありますけれどね。そのようなものですから、十分、大事に使うてください。」と説明された時のことである。

「器の数に限りはあるが、種は数千年分ある。ということは、器と種とは別のものであるということでしょうか?それとも、単に、器と種とは同義と捉えてよろしいのか?

もし、種はあるが器はないとなると、その後の肉体という器をどなたがお創りになられるのでしょう?」このような感じである。

その質問の問いについても、また質問が繰り広げられる。この問答は、ある意味、見事であり、そこに同席していた一同は、唖然としながらも、その智慧はどこから湧くものか、次はどのような質問が繰り広げられるのか、楽しみになっていたくらいである。

なかなかに時間を要して、ようやく彼らは、それぞれにお気に入りの箱を選び、親子の縁を結び、夫婦となる縁をいただいた。

 

その一連の様子を、少し離れていた場にて見ていたうつしみの星の神と、遠い場にあって同じ映像を見つめていた青河龍王は、同じ思いを抱いていた。

「これは、かなりの切れ者だ。さすが、日美の神のおそば仕えを許されたというだけのことはある。賢さといい行動力といい申し分のない若者だ。なれど、あの地球にて、果たして、この賢さはどのようにあらわれてくるものか。まかり間違えば、身を滅ぼすことに繋がるかもしれぬ。なるほど、それゆえに、日美の神が直々に、この遠征に加わったということか。」うつしみの星の神が独り言ちる。

 

「吉と出るか凶と出るか、これは見ものであるが…なんにせよ、彼らの一挙手一投足をこれから見させていただくとして、万が一のことがあらば、すぐにでも駆け付けられるよう、こちらも段取りを済ませておかねばならぬな。」青河龍王はそば付きの二名を自室に呼びつけた。

 

 

うつしみの星の一室には、これから地球へと向かう勇者たちが集まっていた。

「あなた方には、これから、肉体となる器の中に入っていただきます。

その器の中にて、己と対峙する時間をお持ちください。また、時が訪れると、その器の中にある種と、あなた方との間に、意識の交流が生まれます。そして、さらに、時が至った時、その器は姿を変えて、地球へと降り立つこととなります。

くれぐれも、己の本分をお忘れなく、それぞれの祖神様との誓いを真行として、地球にてお過ごしくださいますように。

また、重ねて申し上げておきますが、地球に降り立ちますと記憶はすべて消え失せます。今、どんなに強い意志があり、願いがあって、地球に降り立つことを希望されていたとしても、あちらの世に降りれば、そのすべてを手放している状態で生きることになります。地球には、様々な星や場から、様々な魂を乗せた人が大勢暮らしております。地球には闇も魔も悪もあります。精神を破壊するような出来事に襲われるかもしれません。それでも、光を持って地球へと向かいたいと、心より思い願う方のみ、自らで選んだ箱にお入りください。やはり辞めたいと思われる方は、ここに残ってください。箱に入ってしまってからでは、抜け出すことはかないませんので。」

この説明を聴いて、この場に残る選択をする魂たちは、必ず四分の一程度いるという。

何度となく耳にする地球の話を聴いているうちに、ワクワク気分の遠前の気持ちではいられなくなるようだ。

残った者たちは、うつしみの星から、各星の直行便にて、帰国することとなる。

それもまた、よくある話なので、誰も何も言うものはいない。

行かぬ選択は恥ずかしいことでも、面目が立たないということでもなく、単に、行かない選択をしただけのことなのだ。

自らの居場所である星から、別の星へと学びに行くために出立をした者たちは、地球以外の星を選び直すだけのことである。そこには特別の意味は存在しえない。

 

日美の星、紀の星、実の星からやってきた者たちの中には、その場に残る選択をする者は、ひとりとしていなかった。

地球に覆いかぶさる闇を祓い、愛と慈しみによる光を届ける。そんなシンプルな願いのみで、彼らは、地球へと向かおうとしているのだ。

地球がどんな星であるかを知らずに・・・。

 

同じ頃、日美の神は、みなとは別の場にて、器となる箱と種を選び終えていた。日美の神が地球に向かうためのルートは、他の者たちとは違う。

日美の神は、今回のミッションを為すために、この一同がなるべく一つところに生まれ、家族、親族、師弟関係等、身近にて支え合い、補い合える関係となれるよう手筈を調えており、その流れの中で、若者たちはみな、その肉体となる器や親子、夫婦となる縁を紡いでいた。

このようなケースは、決して特別なわけではない。

釈迦やイエスキリストなども、似たようなケースを辿り、地球に降り立っている。

 

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