魂たちの物語〜地球に生まれて〜

地球に生まれし魂(ひと)としての物語を綴っていきます

其の十三

「私は、あなた様が窮地に陥ることになる前に、

必ずおそばに参ります。必ず、お支えいたします。人の身を離れる時は、必ず、伴に。日美様が対なる神と離れている間だけ、私をおそばに置いてください。」

高龗の神の思いを受けとめて、日美の神は、

うつしみの星に向かい、「肉体という器」を守る神との対面を果たした。

 

うつしみの星の神は申された。

「日美の神、私は、今度の高天原と地球との一件には、われらの存在するこの宇宙とは別の宇宙の存在を感じずにはいられません。

この場に参る方々の中に、何かが紛れ込んでいるように感じずにはいられないのです。

けれど、確証もありません。

地球は、今はまだ、希望するすべての魂を受け入れる星として存在していますので、ここを通過する者がどこから来ていたとしても、通さぬわけにはいかぬのです。けれど、何かが変わってきている…そんな気がしてならぬのです。」

日美の神は、言葉にはせぬまま首を縦に振った。

うつしみの星の神は続けた。

「そして…私は、期待とともに不安を感じております。このような心持ちをもつのは初めてのことですので、説明をするのも難しいのですが……。

日美の星からいらしたという一条殿。まっすぐな強い思い、あのエネルギー、あの賢さ。まだ若いゆえに、自らを調御することが難しい彼の光は、諸刃の剣に思えてなりません。地球に降り立つことが、彼にとって、日美の神やそちらの星の方々にとって、本当に善きことであるのか…と。」

日美の神は、静かに答えた。

「わかっています。すべてをお話することはできませぬが、一条には、地球に降り立つ必要があるのです。今回、高天原と思われるメッセージを聞く機会に、彼を立ち合わせのには理由があります。あの場で私たちは地球の映像を目にし、地球に絡んだ闇を感知しました。その闇、いや、魔というべきでしょうか…その魔性の波動を感知した際、一条の一部が同調したのです。本当に僅かでしたが、間違いなかった。彼はどこかで、あの波動に触れている。どこでかはわかりませぬが、その波動を持ったまま、わが星に置く方が問題は大きくなり、深まってしまうでしょう。

彼がどこでその魔と出会ったのか、その魔の波動を切るために何が必要であるのか、一条を狙ったものなのか、たまたま触れてしまいその波動に絡まれたのか…それすらわからない。わからぬことばかりです。」

 

「一条殿には…その話は?」

 

「いたしました。黙っておっては、信頼に欠いてしまいます。それに、あの者はそんなに弱くはありません。私は一条を信じているのです。」

 

日美の神のまっすぐな瞳は、美しいだけでなく、力強く信頼にたるものであった。

この神なら、自らの子らのためには、身命を賭して、護り抜くだろう。この美しくも和らかな物腰の神に、これほどの強さがあろうとは…うつしみの星の神は思った。

 

「日美の神よ、私は神の名はあるが、魂産みをする役目にない。この星には、地球に生まれし時に必要な肉体の箱を守り抜くという役目を任された魂たちが集まっているに過ぎぬのです。ですから、あなた様が、自らの子らのために、命を捧げる覚悟のあることを感じて、なんとも奇妙な心持ちになっております。胸が熱いような、いっぱいになっているような…

一条殿はお幸せですね、いえ、きっと一条殿だけに限らぬのでしょうが…。

私は役目上、この場を離れることはかないませんが、何かしらの情報が手に入った際には、すぐにお知らせするようにいたします。

どうぞ、どうぞご無事で。一条殿や他のみなさまも、どうぞご無事に事を成し遂げて、早くに自国へとお帰りになれるように。

できることは何でもいたしましょう。

また、必要なことがあれば何なりと申し伝えください。

ここは特殊な星です。地球とは切っても切れない間柄。それゆえに、この星にしかない地球への特別な移動手段があるのです。これは必ずあなた様にとって必要なものになるでしょう。」

こう言うと、うつしみの星の神は、日美の神を連れて銀色に光る回廊へと誘った。

 

回廊は迷路のようになっている。

ところどころに、部屋に入る扉があるが、

扉の先にもまた同じような回廊が続いている。

 

うつしみの星は、やはり不思議な場所である。

普通の人であれば、間違いなく迷い込み、

それこそ一生出て来られなくなるのではないかという恐怖心さえ湧いてきそうだ。

 

しばらく歩くと、目の前に透明なものがあらわれた。扉なのかもしれない。けれど、枠があるわけでもない。その手前で立ち止まると、いきなり、空間が裂け、そこに透明な筒型状の乗り物のようなものが降りてきた。降りてきたという表現が正しいのかどうかわからないが、突然、上から降って湧いたように感じたのだ。

うつしみの星の神は、先にその中に入り、

日美の神を呼び込んだ。「ここにどうぞ。」

一人しか入れないくらい狭い空間に見えるが、

中に入ると、途端にその空間は広がった。

まるで、透明な壁でできたお堂の中にいるようにも感じられる。周囲には、大小の星々が瞬いている。

「日美の神の星にも、似たようなものがおありでしょう。これは、地球上の海の中以外の場と、地球から繋がるいくつかの空間で使うことができるものです。あなた様の居場所としてご自由にお使いください。」

 

こうして日美の神は、高龗の神とうつしみの星の神、そして、青河龍王の協力を得て、

若者たちを引き連れ、地球へと向かうことになる。

 

うつしみの星にて、肉体を選び、親子の縁、夫婦の縁を結ぶ前の夜、一条は、日美の神に呼ばれた。

「一条、地球に生まれし時、そなたは私の息子として生を受けよ。われらはこちらの記憶をすべてなくすことになるが、私は必ず、自らの記憶を取り戻す。そのために必要なことを、すでに日見津足に伝えてある。もし、そなたが思い出せずとも、私がそなたの道付けをして参るゆえに、そなたは自身の中に芽生えるであろう負の感情に飲み込まれぬようにあれ。その感情こそが、そなたに繋がった魔の波動、その正体へと繋がる標になるはずだ。決して、その感情に負けることなく、己の光を通せ。私を信じ、日見月を信じることは、そなた自身を信ずることに繋がっている。

己の光を貫き通すのだぞ。私は、必ず、そなたのそばにおるゆえに。」

 

「この喜び、わが御魂が潰えたとしても、決して、忘れることはありません。私は、日美の神と日見の神の子として生まれ育てていただいたことに誇りと感謝を持ち、地上に降りて参ります。

必ず、地球の闇を祓い、われに付けたる魔の印、解いてみせまする。」

一条は、熱い涙とともに誓いを立てた。

 

 

 

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