魂たちの物語〜地球に生まれて〜

地球に生まれし魂(ひと)としての物語を綴っていきます

其の八

【うつしみの星】

ここは、今まで経験したことのないような場だった。

まるで音のない世界のような、空気が閑として冷え切っているような、揺らぎが一つもないような世界であった。にも関わらず、案内されている長い通路のような、廊下のような空間には、一定にろうそくの灯のような灯りがゆらめいていて、妙に幻想的である。

うつしみの星の中央には、大きな城と高くそびえたつ搭が建っていた。この星に辿り着いたと思ったら、一行は、すでにその城の大きな門の内側に入っていた。

どこからともなく声だけが響き、その声の導き通りに歩みを進めると、城に入るための大きな扉が開いた。が、中は真っ暗で、何も見てとることが出来ない。

「ここより、まっすぐにお進みください。」また声の主が案内を始める。

「ここうつしみの星には、九つの部屋がございます。まずは、一番重要な地球に生まれるために必要な肉体を選ぶ部屋にございます。肉体というものについては、みなさま、認識されたことはないと思いますが、先に、地球という星の講義の中で学ばれていらしたと伺っておりますので、通常の講義はパスさせていただきます。

次は、地球でのお役割(天職)をえらぶお部屋です。そして、親子を選ぶ部屋。パートナーを選ぶ部屋です。親子とパートナーを選ぶお部屋につきましては、他の星からご参加される方もご一緒となりますので、ご了承くださいませ。

では、このまままっすぐにお進みくださいませ。」声の主の気が消えた。

 

「九つの部屋があると言っておきながら、四つしか説明がないのは何故なんだ?」応凌は首を傾げた。それにしても、一体、どこに部屋というものがあるものか、あまりにも長い通路を歩き続け、退屈になり始めた矢先に、突然、何もなかった空間から重厚感のある扉が顕われた。

扉が開くと、中から、髪を高く上へと束ねた女官のような方が、「こちらへ」と身振りで部屋の中へと誘ってくれた。

 

その部屋の中には、いくつもの箱が無造作に並んでいた。並んでいたというよりは、適当に置かれていたという方が近いかもしれない。

それにしても。扉を開けて部屋に入ったというのに、そこには、壁もなく、天井もなかった。けれども、たしかに部屋のような空間になっているのである。

先程の扉のように、今度は、美しい女神のような存在が、忽然と姿を顕わした。

「ようこそ、お待ちしておりました。オオモノヌシノの神より、お話は聞いてございます。かの美しき日美の神のご依頼とあらば、聞かぬわけには参りませんからね。

こちらのお部屋は、特別室にございます。肉体を選ぶお部屋となりますが、一般の魂人たちが入れる場ではございません。特別な神よりのご依頼があった方のみが入れる場。

ここを通られる方はみな、大和・日の本の国へと生まれることが決まっておりまする。

もちろん、他の肉体を選ぶ場を通る方の中にも、たくさん日の本の国に生まれることになる方がいらっしゃいますが、こちらの場にて箱を選ばれる方につきましては、日の本に集いし神々との協働作業をされることが決まっております。もちろん、あなた様方は人として地球に存在しておりますので、人と神との協働作業ということになります。

「では、みなさま。ここにある気に入った箱を一つだけお選びください。」

「すみません」と、応凌が手を挙げ、質問した。

「箱の中に入っているものは何ですか?肉体というものが入っているということなのでしょうか?」

「この箱の中には、肉体になる種のようなものが入ってございます。陰と陽のエネルギーが人の体に入って大きく育っていくのです。」

「この箱に刻まれてある数字はなんですか?」

「そちらの数字は、その肉体のだいたいの耐用年数だと思ってくださいませ。数字の横に描かれている象形は、性別を顕わしてございます。箱を選んでいただきましたら、次の間へご案内いたしますので、さあ、お選びください。」

 

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